増大する自然災害に、企業はどう向き合うか

昨年後半から、地球温暖化とそれに伴う自然災害の発生、これらの事案にどう対処すべきか?というテーマで多くのテレビ番組が作られていたように感じます。これは今に始まったことではありませんが、特にこの1〜2年で日本にも甚大な被害が及んだことで、ようやく真剣に向き合うようになったと見るのか、世間の関心(ニーズ)が高まってきたからテレビ局が作り出したのか?いずれにせよ、待ったなしの状態であることは数字で証明されていることです。更に今年は東京オリンピックが開催されることから、企業の営業活動は様々な緊急事態への対策が必要とされていますが、どの程度の企業が緊急の事態に対して向き合っているのでしょうか?

社会的地位も資産も多大な大企業は、既にコストを投じて様々な対策に乗り出しているようですが、中小企業はどうでしょうか?これまでにも様々なセキュリティ事象がニュースに取り上げられた際、いくつかの中小企業経営者の方にお話を伺いましたが、「まだウチには早いよ」「ウチは絶対大丈夫」「即収益に繋がらないことにお金はかけられない」という後ろ向きな発言ばかり耳にしました。もちろん、そこまでの好景気でも無く(政府は史上最高の好景気だと言っているみたいですが)、内需が拡大しているわけでも無く、将来が不安視されている状況なので、気持ちも分からなくはありません。とはいえ、各企業様には従業員がいるわけで、彼らの生活もかかっています。何か不測の事態があった際は、経営者だけが腹を切って済む話なのでしょうか?

近年、国や自治体はBCP(事業継続計画)の策定を企業に促し、指定した項目を実施すると補助金や助成金も交付すると、大々的なキャンペーンも行うようになりました。おそらく資金力のある企業様は、既にコンサルを雇って要件を満たし、補助金や助成金を得られているかもしれません。助成対象項目の例は次のようなものです。

1.自家発電装置、蓄電池等の設置
2.災害発生時に従業員等の安否確認を行うためのシステムの導入
3.データ管理用サーバー、データバックアップシステムの導入
4.飛散防止フィルム、転倒防止装置等の設置
5.従業員用の備蓄品(水・食料等)、簡易トイレ、毛布、浄水器等の購入
6.水害対策用の土嚢、止水板等の購入、設置
7.耐震診断…自社所有の建物耐震診断に係る直接の費用のみが対象

とても物理的なものが多いですね。要するに設備投資せよ、ということのようです。でも、本当にこれで大丈夫でしょうか?事務所や工場に被害が無ければ事業継続は可能なのでしょうか?もちろん物的被害は避けたいところですが、それ以上に大切な人や情報(ノウハウ)についてはどこまで対応策を示してくれているのでしょう?

多くの経営者の皆様が見向きもしなくなる要因は、このような形ばかりのマニュアルを国や自治体が提供しているからなのでは?と憂がった見方をしたくなります。よく分からないまま情報を鵜呑みにし、無駄なことにコストを割いてあげく、全く結果が伴わない事態に陥り、嫌気が差してしまうのではないでしょうか。と言いますのも、実は同じようなことが「事業継続のためのリスクアセスメント」としてISMS(ISO27001・情報セキュリティマネジメントシステム)にも要件として存在し、これを策定しないと認証してくれないのです。弊社は自力でISMS認証を取得した経緯から当該要件の目的を理解しており、BCP助成要件を見ると、少し首を傾げたくなる要素があるのも事実です。

本来は各社ごとが抱える事情や形態を踏まえて、何がその企業のとって核となっているのか?何が無いと全く事業として成立しないのか?ということを検証した上で緊急時の対応策を、可能な範囲で定め、毎年の事情を鑑みながら見直し、継続することが重要なのです。

そして、事業継続計画を立てると、必然的に働き方も見直す必要が出てくることが分かります。全ては仕事の仕方を見直すと、いざという時の事業継続方法も見えて来るのです。